『流れ続ける流れ星』
 コンビニの控室。店長代理の拓弥と10歳以上離れた年上のバイト安夫とのやりとり。使う方も、使われる方も、変な神経の使い方をしてしまう・・

 記念すべき『メトロ』の第1話目。とりあえず自分がどういったテイストのものを作りたいのかをはっきりさせるため、劇場を押さえる前に、キャストに声をかける前に、この話を書いてみたんです。バイトの話から始めたかったんです。ご存じかどうかわかりませんが、フリーターというスタイルは20年前くらいから流行しはじめ、その時20代前半の若者達がフリーターのコアでした。しかし、今、30歳前のフリーターの数が、この時の20代前半のフリーターの数を大きく上回っています。サラリーマン物の芝居やら、特定の職業をモチーフにした芝居は、数ありますが、フリーター達を描いたものは意外と見当たりません。たまに芝居に登場すると、フリーターイコール意志を持たない者としてしか描かれていません。プロフェッショナルでもない、責任もあまりない、そして、仕事に執着しているわけでもないので、すぐに辞めてしまう。そういった人々が働く職場で濃密なお話が作れるわけはないのです。しかし、2時間かけて描くことはできなくても、15分ならば、充分主題となりうるわけです。逆に『メトロ』そういった人々にスポットをあてて作劇したいと思っていたんです。それに、演劇をやっているほとんどの人間はその生計を、いわゆるバイトによって成り立たせています。逸話には困らないはずです。300話のスタートはこれしかないと思っていました。『メトロ』の始まりであり、これから続くバイト話シリーズの第1弾でもありました。それと、もう一つ。私も気が付くと12年近く演劇をやってきて、つきあう役者の年齢が高くなってきました。昔だったら、たとえこんな話を思いついたとしても、やってくれる役者がいなかったでしょう。芝居を作るノウハウも得た。メソッドも確立しつつある。そして、役者もいる。さあ、300話に向けて出発です。

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